主人のかたきを討った犬
昔から、名犬にまつわるエピソードは数限りなくありますが、最も多いのが、飼い主への忠誠心にまつわるエピソードです。
犬が飼い主に忠誠を尽くすのは、犬は、群れのリーダーのもとで暮らすという習性からきています。
犬は、いかに飼い主に忠実であるか知っていただくのに最適な物語があります。
14世紀のヨーロッパが舞台の、ドラゴンという名のグレーハウンド犬のかたき討ちの物語です。
ドラゴンは、オリーブという王室射者に飼われていました。
オリーブには、イザベラという恋人がいましたが、そのイザベルに横恋慕するマケールという男がいて、マケールはイザベラを獲得しようとして、オリーブを暗殺してしまいました。
現場にいたドラゴンは、マケールに飛びかかりましたが、運悪く気絶させられてしまいました。気絶からさめたドラゴンは、イザベラのもとに走りました。
ドラゴンの様子にただならぬものを感じ取ったイザベラは、ドラゴンの案内に導かれ、暗殺現場に埋められたオリーブを発見します。悲しみにくれましたが、犯人の手がかりはありませんでした。
ところがその後、普段はおとなしいドラゴンが、マケールを見るたびに襲いかかることが続きました。人々は、しだいにマケールを疑い出し、王の耳にも噂が届きました。
そのうち、マケールのオリーブ殺しの噂はやまず、ついに両者の決闘が王によって命ぜられました。
激しい戦いのうち、ドラゴンが勝ちました。
打ちひしがれたマケールは、裁判官の前で犯行のいっさいを告白し、絞首刑となりました。
1317年の話で、このときの決闘の模様を描いた絵画は、今も残されているそうです。